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魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ 第五話「聖夜の夜、そして風魔」 「・・・・」 機動六課宿舎の外、中々人目のつかない所にその男はいた。 黒と白を強調した忍用の着物に、目から下を露出させた兜。その兜から出た少し黒みを帯びた赤髪。 背中には忍者刀を二本、繋げて背負うように差している。 右の肩当てから流れる血、その量は半端ではなく、彼が腰掛けている草が真っ赤になるほどだった。 「・・・・・」 この男は考えた。主から命ぜられた任務を予定通りこなし、横目で大武道会を見ながら帰路についていた途中、光に巻き込まれた。 そして目覚めたときにはここにいた。今と違うのは目覚めた当時、肩に太い木の枝が刺さっていたことだけ。 彼は右肩に刺さっていた枝を抜き、今に至る。何故、自分はここにいるのだろう? 「・・・・・」 どうしようもないので立ち上がろうとするが、肩が熱く焼けるかのような激痛が走る。 立ち上がれずにそのまま倒れこむ男。 ここまでか。そう思った刹那 「あ・・・あ・・・・」 ハチマキを締めた蒼髪の少女が顔を真っ青にして立っていた。 それから、男の意識は途切れた。 「!!」 次に目覚めたとき、室内にいた。 肩は包帯が巻かれ、痛みも和らいでいる。誰が自分をここまで・・・? 上半身だけを起こすと先ほどの蒼髪の少女がいた。 「あ、目覚めたんですね?よかったぁ・・。心配したんですよ?っていっても・・・あたしもパニックになってここまで抱きかかえてきましたが・・。」 えへへ、と恥ずかしそうに笑い頬を赤に染める少女。すると彼女が助けてくれたのだろう。 口を開くが言葉が出ない。彼は小さい頃、「声を無くした」。だからどこぞの戦国最強と同じく、喋れない。 少女が近づき、近くにあった椅子を自分が寝ている布団(ベット)の隣に引き寄せ、座る。 「あなたのお名前は・・・風魔・・さんですか?」 いきなり驚いた。見知らぬ少女に自分の名前を言われたからだ。 少女は自分が驚いたのを見抜いていたかのように自分が持っていた忍者刀を見せる。その鍔にははっきりと「風魔」と彫られていた。 やれやれ、だからわかったのか。肩を落とし、素直に頷く。いかにも自分は風魔小太郎。忍者である。 「あ、あたしはスバル。スバル・ナカジマって言います。ここは機動六課の宿舎の医務室です。」 スバルと名乗った少女。そしてわからない単語が一つ。 (・・・・機動六課?) 今までそんな軍はあったのだろうか。主からも聞いたことはないし、部下からも聞いたことはない。 そんな自分をよそに、スバルという少女は綺麗に切った林檎を爪楊枝に刺し、顔の前に出す。 「はい、あーん。」 「!!!?」 いきなり驚いた。その2。いきなり林檎を自分の目の前に出されても・・・。 顔を逸らすしかない。おそらくスバルから見れば自分の顔は赤いだろう。 「左手だけじゃ食べにくいでしょう?はい、口あけてください。」 確かにスバルの言っていることは筋が通っているが・・・だからと言って初対面の者にそんなことをしていいのだろうか? 数秒後、その林檎を食べきった自分がいた。恥ずかしさで味わう余裕がなかった。 そんな自分の横で嬉しそうに笑うスバル。ふと窓を眺める。雪が降っていた。 宿舎別室で忠勝は機動を開始した。 体を見た。茶色かった。見事な茶色に自分の体が染まっていた。次に鏡越しに自分の顔を見た。 鼻が赤かった。そりゃあもう見事なまでに赤かった。 「おっきいトナカイさん!」 忠勝の目の前で金髪の少女、ヴィヴィオは喜ぶ。ヴィヴィオの足元には赤と茶色のペンキ。 そんな少女の横で「ごめんなさい。」とこれでもかというくらいに何回も頭を下げるエリオとキャロ。 その奥で「止めようとしたんだけど・・・。」とつぶやくなのはとフェイトの姿が。やはり子供相手には甘くなるらしい。 どうやら今日は「くりすます」という祝い事の日らしい。 当然のごとく忠勝は「くりすます」なんて知らないし「となかい」なる動物も知らない。 生きてきた時代が違うだけでこんなに常識も違うものなのである。 三人に連れられ広間に出る。あたりは綺麗な光やらテープやらで装飾されており、忠勝は一瞬見惚れた。 「ぶはっ!!何なんだ忠勝の旦那!その格好は!!」 思いっきり酒を吹き出したのはヴァイスであった。 「あははは、大きすぎるトナカイですねー。」 次にグリフィスが控えめに笑う。まぁ、笑われているのには変わりない。 「なんか忠勝さん、似合ってますねー。」 「うんうん、やっぱり今日だからかな?」 「ヴィヴィオちゃんてばいたずらっ子ねー。」 次にルキノ、アルト、シャリオが忠勝の姿を見て笑う。 忠勝ちょっと拗ねた。 腕を組んでそっぽ向いたはずの方向には・・・大爆笑するヴィータを始め、自分を笑うヴォルケンリッターの面々。 忠勝さらに拗ねた。 ふと下を見ると紙で作った角を付けられ、鼻まで赤く塗られている蒼い狼、ザフィーラの姿があった。 「・・・お前もか。」 ザフィーラの言葉に素直に頷く忠勝。ちょっと、嬉しくなった。 そんなこんなしていく内にクライマックスでプレゼントなる贈り物の交換をしている六課メンバー。 怪我人を看護していたスバルも戻り、広間は騒がしくなっている。 当然忠勝はプレゼントを準備していない。渡されてもいない。 一人窓から見える夜空を眺める忠勝。 肩を叩かれた。振り向くとそこに立っているのは八神はやて。 「忠勝さん。はい、プレゼント。」 渡されたのは小さな小包。忠勝はなんで自分に?と思いながら受け取る。 「ほら・・あの時頭なでてくれたやろ?あれで逆にウチが励まされてしもうてな・・。そのお返しや。」 「・・・・」 小包を開けると小さな宝石。なんの捻りもない、丸くて黄色い宝石。 それでも忠勝は大事そうに握り締めた。忠勝はまたはやての頭を撫でる。 「あかん・・・あかんて。また・・・。」 「はやてに近づくなー!!」 忠勝、鉄槌で殴られる。 頭を抱えて立ち上がると目の前にはグラーフアイゼンを構え、巨大なソリの上でリィンフォースⅡとともに仁王立ちするヴィータ。 いつの間にか自分の体はソリから伸びるロープでつながれていた。 「テメーはソリでもひっぱっとけー!!」 「ひっぱっとけ。ですー!!」 忠勝は素直にそうすることにした。ただし、ちょっと捻った。 両手を前に突き出し、目を赤く光らせると背中の紋章から二門の巨大なロケットが。 忠勝、機動形態。 「え、ちょっと待て、落ち着け忠勝、ただかつ!ただかぁぁぁぁぁぁぁつっ!!」 悲鳴とともに巨大なトナカイはソリの上に二人の小さなサンタを乗せたまま、夜空へと飛び立った。 そのころ、かつて伝説の忍と呼ばれた風魔小太郎と、いつの間にか侵入した鬼、長曾我部元親は医務室で話をしていた。 「・・・・」 「わかってらぁ。なんで俺等がこんなとこに飛ばされちまったか・・・だろ?」 元親の言葉に頷く風魔。 「俺だって知りてぇよ。ま、事故・・・と考えたほうが手っ取り早い。」 本多忠勝が失踪した後、次に元親、そして風魔。 実を言うと、何も関連性がない。したがって手がかりもない。 「戦国最強さんには会ってねぇが・・・ここにいるらしいな。」 巨大な錨を持ち、ドアに向かう元親。 廊下に出る前に立ち止まり、廊下側を向いたまま元親は言う。 「・・・・風魔。死ぬなよ。戦国時代にいた時ぁ敵同士だったが、ここにいる間は数少ねぇ仲間なんだからよ。」 最後に「じゃあな」と言い放ち、立ち去った。 「・・・・」 風魔はまた窓から見える風景を眺め、物思いに耽る。 戻る 目次へ 次へ
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amazonで探す @楽天で #東京湾景+~Destiny+of+Love を探す! 月21フジ 2004.07.05~2004.09.13 13.8% wikipedia 前 愛し君へ 次 ラストクリスマス Hulu NETFLIX dTV PrimeVide U-NEXT TVer Paravi GYAO youtube検索 / Pandora検索 / dailymotion検索 / bilibili検索 1 日韓を駆け抜ける運命の恋 2004/07/05 17.7% 2 生きていた恋人 2004/07/12 14.3% 3 真夏の海の告白 2004/07/19 13.5% 4 私たちの38度線 2004/07/26 13.3% 5 釜山からの挑戦状 2004/08/02 12.3% 6 奇跡のデジャヴ 2004/08/09 13.1% 7 太平洋の誓い 2004/08/16 13.8% 8 決断 2004/08/23 13.9% 9 一か八か 2004/08/30 10.2% 10 花嫁の逃亡 2004/09/06 13.7% 11 最終話~倫敦~ 2004/09/13 16.3%
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リリカル遊戯王GX 第三話 飛べスバル! ペガサスに乗る魔法拳士! 「レイ、大丈夫か!?」 「じゅ、うだい……」 レイの悲鳴で飛び起きた十代とオブライエンは、途中でヨハンとアモン、なのは達と合流しながらレイの下へ向かった。 倒れていたレイを十代が慌てて抱き起すと、レイはわずかに目を開けて苦しそうに言葉を絞りだす。 「十代……マルっちが……一年の、加納 マルタン君が……」 「マルタン? そいつがどうしたんだ?」 「オレンジ色の影に、襲われて……」 「なっ!?」 オレンジの影、十代は自分たちがこの世界に飛ばされる直前に出会った人影を思い出す、 まさかそいつがアカデミアに入り込んでいるとは思ていなかった。 十代が考え込んでる間に、ヨハン達は二手に別れマルタンの捜索を開始する。 「十代君、その子の肩を見せて」 「なのはさん? あ、ああ……」 なのはに言われるまま、レイの肩口をなのはへと向ける。 その肩には痛々しい、明らかに普通ではない傷があった。 「何なんだ、この傷は……!」 「そこまではわからないけど、このままじゃ危険だね」 「くそっ、早く保健室に――」 「待って、その前に簡単な回復だけでも……」 言いながらなのはは治療魔法をレイへとかける。 多少レイの顔色はよくなったが、肝心の傷は少し塞がっただけだった。 「これは……この傷自体が魔力を消している……?」 「治せないのか?」 「ごめん、私じゃ体力を回復させることが限界みたい」 「いや、十分だぜ。俺はレイを保健室に連れていくよ」 シャマルさえいればなんとかできるかもしれないのに…… なのはは自分が無力だと沈みかけるが、今はそんな場合ではないと十代と共にレイを保健室へと連れていく。 「貴様・・・・・・!?」 図書室に来たアモンは目の前の光景に驚愕する。 レイと一緒にいたはずのマルタンが――左腕がモンスターのようになっている――どうやって作ったか、玉座のような椅子に座っていたのだ。 「何故だ、何故この少年を選んだ? お前が望んでいるものは何なんだ! 俺たちをこの世界へつれてきたのはお前なんだろう!?」 「ああ、アモン、やはりお前は賢い」 「っ!?」 「ボクの僕として働いてくれないか? 人間としてのお前の知恵を貸してほしいんだ」 マルタンが手を差し伸べる。 アモンはその手を睨みながら思考を巡らし―― 結局その後もマルタンを見つけることはできず、早朝に十代達は保健室へ集まっていた。 レイは傷の影響か、高熱を出して寝込んでいる。 なのはが再び魔法をかけるが、ほとんど効果はない。 「この感じ、AMFに似てるね、体に触れた途端に魔力が消えてる」 「魔力が消される……レイちゃんを襲った奴は通信や転移を封じてる奴と同じ……?」 フェイトとティアナは思考を巡らせるが、さすがにこれだけの情報からでは大したことはわからない。 魔法が効かないとなると通常の医療技術が頼みだが、鮎川も首を横に振る。 「保健室の医薬品じゃ足りないの、この薬が必要なんだけど……」 「……聞いたこともねぇ」 鮎川にメモを渡されるが、十代にはさっぱりだ、 横からオブライエンが覗き込み、無表情でいることの多い顔を顰める。 「専門的な薬品だ、このような世界で見つかるかどうか……」 「そんな、それじゃレイは!」 「待て、薬ならあるかも知れないぞ」 思わず叫びそうになる十代を、三沢の声が静止する。 一同の視線が三沢に集まり――いくつか「そういえばいたっけ……」という視線があるのを感じ少し落ち込みかけるが、気を取り直して言葉を続ける。 「ここに来る途中、なのはさん達と出会う前に潜水艦を見つけたんだ」 「潜水艦!? こんな砂漠に?」 その場の全員が信じられないといった反応だったが、 ただ一人、アモンだけが必要以上に動揺していることにティアナは気づく。 だがその事を追及するよりも前に「どこかの軍の物なら専門的な医薬品もあるかもしれないな」と言われ、タイミングを逃してしまう。 確かにその通りだ、何らおかしいところは無い――だが、今の反応が妙に気になった。 「スバル、あのアモンって人、注意して見てて」 「ティア? うん……いいけど」 ただの気のせいかもしれない可能性の方が高いのだ、迂闊にトラブルの種になりかねない話題を広めるべきではない。 そう判断し、すぐ横にいたスバルにだけ自身が疑いの念を持っていることを伝える。 自分の気のせいなら問題無し、 もしも何かよからぬ事を企んでいたとしたら……その時は何としても止めなくてはならない。 「それじゃ、アカデミアは任せたぜ」 「ふっ、この万丈目サンダーに任せておけ」 「イヤン、兄貴格好いい~」 「……貴様らは黙っていろ」 十代・ヨハン・オブライエン・ジム・アモン、そしてスターズ隊が潜水艦へと薬や食糧等を探しに行く事となった。 残るメンバーはモンスターがアカデミアに来た時のための防衛要員である。 「フェイトちゃん、そっちをお願いね」 「うん、なのは達も気を付けて」 スターズが行くことになったのは、エリオやキャロよりもスバル達の方が体力が高いから、 そして、ティアナがアモンといる事を希望したからだ。 「……なのは、どう思う?」 「私はティアナがそう判断した材料を見逃しちゃったからなんとも言えないよ、今はティアナ達に任せるしかない」 なのはとフェイトはティアナが疑惑の眼でアモンを見ていることに気づいてはいた、 ただ、ここで自分たちも必要以上に疑いをかけるとどうしても不自然になってしまい、いらぬ争いを生む可能性が高い。 今はティアナに任せるのみである……ただでさえ、この二人は嘘が下手なのだから。 「マルタンが、マルタンが見つからないのであ~る!」 「ナポレオン教頭、少しは落ち付くノーネ」 校長室――だがアカデミアの校長、鮫島は学園にはいなかった――で、ひたすら嘆き続けるナポレオンをクロノスは持て余していた。 十代達からマルタンが行方不明になったと聞かされてから、ずっとこの調子なのだ。 「教頭、加納 マルタン君と何か関係があるノーネ?」 「な、な、ないのであ~る! せ、生徒の無事を願うのは教師として当然のことであ~る!」 間違いない、何か関係があるようだ。 だがこの様子では詳しいことは言わないだろう、何よりそれが事件解決の鍵になる訳がない。 そう考え、クロノスは半ば無理矢理潜水艦の探索へと向かった十代達が早く帰ってくることを祈るのであった。 「それにしても……鮫島校長は肝心な時にいつもいないノーネ」 その頃、十代達の元の世界…… 「これは……いったいどういうことだ」 鮫島は呆然としながら目の前の光景を見ていた。 デュエルアカデミアのある島、その一部が、ぽっかりと削り取られたように消失していたのだから無理もない。 尚も呆然とする鮫島だったが、上空からやってきたヘリの音に我を取り戻す。 「ミスター鮫島、お久し振りデ~ス!」 「ペガサス会長!」 ヘリから降りてきた銀髪の男、デュエルモンスターズを作り出したペガサス=ジェイ=クロフォードと握手をかわす。 ペガサスもアカデミアが消えた情報を入手し、急きょ駆け付けたそうだ。 不安そうに生徒たちの無事を祈る鮫島に、ペガサスは優しく声をかける。 「大丈夫です、ミスター鮫島」 「……ペガサス会長?」 「行方不明になった生徒の名簿には、十代ボーイの名前もありました。十代ボーイはミラクルボーイ、きっとこの事件もなんとかしてくれマース」 「……はい」 ――私たちは無力デース、ですが、決して諦めはしまセーン。だから十代ボーイ、不安に怯える生徒たちを勇気づけてあげてくだサーイ 更に同刻、とある時空世界…… 「主はやて! それは本当ですか!?」 「どうやらそうみたいや……まさか、こんなことになるなんて……」 「は、はやてのせいじゃねぇよ! だからそんな顔しないでくれってば!」 なのは達との連絡が取れなくなった事を伝えられ、はやて、そしてその守護騎士であるヴォルケンリッター達はかなり動揺していた。 通話だけでなく、転移することさえできなくなってしまったというのだ、 その仕事を持ち込んだはやてとしては、自分のせいだと思わざるおえない。 「……主はやて、テスタロッサ達なら少々の困難、平気なはずです」 「それは、私も十分承知や。だけど……」 「はやてちゃん、私たちは誰よりなのはちゃん達の力を知っているはずよ……信じましょう」 「そうだよ! なのはとスバル達ならきっと全員無事に帰ってくる!」 シグナム達が次々と励ましていくが、はやては相変わらず顔を上げられなかった。 そこで、今まで黙っていたザフィーラが口を開く。 「主、そこまで不安ならば、直接行くしかない」 「ザフィーラ……だけど、それは無理や、ここの事件が……」 「わかっています。だからこそ、今は俯き止まっている場合ではない。早急にこの事件を解決し、高町なのは達の救援に」 「――っ、そう、やな……そうや、今はこの事件を終わらす、それしかない! いくで、みんな!」 『はい(おう)!』 ――なのはちゃん、フェイトちゃん、みんなもう少しだけ待ってて! 私らも、すぐに行くから! 「なあ、せっかく精霊を実体化できるんだしさ、ネオスに乗っていかねぇか? あっという間だぜ!」 「いや……昨日サファイヤ・ペガサスを召喚した時デスベルトが作動した、カードを使うのは慎重になったほうがいい」 まるで新しい玩具を買ってもらった子供のように十代が言うが、すぐにヨハンが静止する。 「ちぇ、せっかくなのにな……」 「クリクリー?」 「あはは、はねクリボーはいいんだよ」 笑いながらはねクリボーとじゃれる十代を見て、ヨハンは何か言おうとするが、なのはに止められる。 そのままなのはが十代と目線を合わせるようにかがみ、肩を掴みながら語りかけた。 「十代君、これは遊びじゃない、人の生死がかかっていることなんだよ。 勿論私達は君たちを守ることを優先する、だけど、それでも守りきれない可能性は十分にある。 その時、迂闊な行動を取ったら高い可能性でその人だけじゃなく、他の人も死ぬ……ここは、そういう世界なの」 「っ……ああ、わかってるてば、ごめん」 真剣な瞳でじっと見つめられ、初めは適当な返事をしていた十代もこの状況を正常に理解してきたようだった。 それを察すると、なのはは一転して笑顔になる。 「うん、それじゃあ急ごうか、レイちゃんが待ってるよ」 「よっしゃあ! 早く行こうぜ!」 あっという間に立ち直り、さっさと自分一人だけで先行してしまう。 「……少し、頭冷やさせたほうがいいかな?」 「やめてあげてくださいなのはさん、お願いですから」 マルタンは十代達が外へ向かったのを見て、笑いながらその左腕に意識を集中させる。 するとその腕がまるでデュエルディスクのように変化し、マルタンは一枚のカードを取り出しセットした。 「砂漠の僕を、君たちに送ろう・・・・・・」 「あ、あれ潜水艦じゃないか!?」 「本当だ・・・・・・っておい十代! 一人で行くな!」 「ヘイ十代! 足元に気をつけろ!」 「へ? うわわ!?」 ジムの忠告を受けた直後、十代の足元が突然蟻地獄のようになり十代は砂に飲み込まれていく。 「いかん! ロープを……」 「マッハキャリバー!」 『Wing Road』 オブライエンが命綱を用意して飛び込むよりも速く、 スバルが魔力で作った道を十代のところまで伸ばし引き上げる。 「大丈夫!?」 「あ、ああ……すっげぇ」 「トラップ発動、マジックジャマー!」 その声が聞こえた瞬間、スバルは自分の直感を信じ十代を蟻地獄の外まで投げ飛ばす。 そして次の瞬間――ウイングロードは消えスバルが蟻地獄へと落とされた。 「スバル!?」 「今のは、マジックジャマー、魔法を一つ打ち消す罠だ!」 ヨハンの説明になのは達は顔を青くする。 まさか問答無用で魔法を打ち消すなどと、理不尽なカードがあるとは思わなかった、 もしもそんなカードが何枚もあるのだったら自分達にとっては致命的だ。 「アモン、このロープを頼む!」 「あ、ああ……」 オブライエンが自分の腰に巻きつけたロープをアモンに渡し飛び降りる。 砂に埋もれていくスバルを捕まえるが、蟻地獄の中心の砂が盛り上がり、一人――一匹と言うべきだろうか?――のモンスターが現れる。 ―岩の精霊 タイタン― 攻撃力1700 防御力1000 効果モンスター 「我が聖なる砂漠に入りし邪なる者達よ、岩の精霊 タイタンの名に置いて成敗する!」 「あれは、デュエルディスク!?」 タイタンの左腕に装着されている機械、十代達のものとは形状が違うが、それは間違いなくデュエルディスクだった。 そのディスクを見て、ヨハンは自分のディスクを作動させる。 「ヨハン!? ここは俺が……」 「いや、みんなはオブライエンとスバルを頼む!」 十代を制しヨハンは皆と少し離れた場所でタイタンと向き合う。 「異世界の者よ、貴様が相手か」 「ああ! いくぜ、デュエル!」 ―タイタン LP4000― ―ヨハン LP4000― 「私のターン、サンド・ドゥードゥルバグを召喚!」 タイタンがディスクにカードをセットすると、蟻地獄の中心に蠍とも蟻地獄ともとれないモンスターが現れる。 ―サンド・ドゥードゥルバグ― 攻撃力1200 防御力800 効果モンスター なのは達は初めて見るが、これがデュエルモンスターズの基本の流れなのだ。 ヨハンがデュエルをしている間にスバル達を引っ張りあげようとはするのだが、蟻地獄に囚われ中々上手くいかない、 飛行魔法で助けに行くことも考えたが、またあの罠カードを使われたら重量が一人分増えるだけである。 「スバル、ウイングロードは!? 例え消されても一瞬だけでも出せればあんたならこっちまで跳べるでしょ!」 「ダメ、さっき消された時から魔力が結合してくれない!」 ティアナが苦し紛れに考えた策もあっさりと却下される、 それを見ながらヨハンは決着を急ごうとカードを引く。 「俺のターン! アメジスト・キャットを召喚!」 美しい毛並の豹のようなモンスターが召喚される。 ―宝玉獣アメジスト・キャット― 攻撃力1200 防御力400 効果モンスター 「頼むぞ、アメジスト・キャット!」 「任せといて!」 「アメジスト・ネイル!」 アメジスト・キャットがタイタンの召喚したモンスターへ飛び掛るが、 その相手が砂の中に潜ってしまい振りかざした爪は空を斬る。 「何!? 宝玉獣の攻撃を回避するなんて……!」 「やはりこの世界でもデュエルモンスターズの基本は成り立っている。 あのモンスターはフィールドが砂漠の時、1ターンに一度だけ攻撃をかわすことができるんだ」 アモンの冷静な考察に、ジムはある事を思い出し表情を強張らせる。 「おい、そうなるとこの蟻地獄は……!」 「メサイアの蟻地獄だとしたら、レベル3以下のモンスターは召喚されたターンの終了時に破壊される……!」 「そんな、ヨハン!」 「くっ、アメジスト・キャット!」 その危惧は当たり、アメジスト・キャットはどんどん砂の中へと沈み込んでいき、倒される。 アメジスト・キャットの効果によってその宝石がヨハンの横に現れるが―― 「まずい! ヨハンの場はがら空きだ!」 「ふはは! サンド・ドゥードゥルバグで攻撃!」 相手モンスターの直接攻撃に備えてヨハンは身を堅くする。 しかしいつまで経っても攻撃が来ることは無く、顔を上げ…… 「スバル!」 「何だと!?」 サンド・ドゥードゥルバグはヨハンではなく、スバルの足にその強靭なアゴで噛み付いていた。 スバルは痛みを必死で堪え振り払うが、すぐ側のオブライエンはヴァーチャル映像による痛みとは比べ物にならない、 本物の傷みというものがスバルを襲っている事に気づいた。 実際にスバルが傷ついていてもなのはは動けなかった、いつの間にかタイタンの場に伏せられている一枚のカード、 デュエルについてはよく知らないなのはだったが、あのカードから受ける感覚、それは先ほどスバルのウイングロードを消したのと同じものだ。 ――恐らくあれも魔法を解除する罠……間違いなく、敵は私達の存在を知って対策を取っている! 「貴様! 何故俺を狙わない!?」 「何を言っている? 確実に仕留められる獲物からやっているだけだ。 これは貴様らのやっていた児戯等とは違うことがまだ理解できんか!?」 「児戯だと……!」 今まで自分達が真剣に向き合ってきたデュエルを馬鹿にされヨハンの頭に血が上る、 それは彼の思考を短絡化させ、戦略を安直な物へと劣化させていってしまう。 「砂漠では確かに宝玉獣の方が圧倒的に不利、ならば空から攻撃だ! コバルト・イーグルを召喚!」 「よっしゃ、久々ー! やってやるぜ!」 ヨハンの場に新たな宝玉獣が現れる。 ―宝玉獣コバルト・イーグル― 攻撃力1400 防御力800 効果モンスター 先ほどのスバルへの攻撃で、これは普通のデュエルでは無いことがわかった。 ――ならば、こういう事も! 「行け! コバルト・ウイング!」 「おっしゃぁ!」 通常のデュエルではまたモンスター効果で攻撃を無効化されるだけだろう、 だが、アメジスト・キャットよりも遥かにスピードのある攻撃で潜る前に捕えられれば―― 「砂漠の守りを甘く見るな!」 「何!?」 突如コバルト・イーグルの真下から砂が吹き上がり、コバルト・イーグルを空高く吹っ飛ばす、 これは完全にヨハンのミスだ、普段の彼ならばこんなミスはしなかっただろうが、先ほどの挑発にまんまと乗せられてしまった。 「ふっ、貴様の場はまたがら空きだな!」 「しまった!」 コバルト・イーグルはまだ体勢を立て直せていない、 これが普通のデュエルならば場にモンスターがいる以上プレイヤーへは攻撃できないだろうが、あいにくこのデュエルは普通じゃない。 「行け! サンド・ドゥードゥルバグ!」 「うわああああ!!」 先ほどとは逆の足に噛み付かれ、スバルは今度こそ悲鳴を上げる。 このままでは自分を掴んでいるオブライエンも危険だ、何度も「自分の事はいい」と言おうと思ったが、 それでは意味がない、自分がいなくなれば今度はヨハンが直接狙われるだけなのだ。 だが、冷静さを欠いたヨハンでは1ターンに一度攻撃を回避するあのモンスターへの有効策は思いつくのに時間がかかるかもしれない。 ――1ターン……? 一度だけ…… そこでスバルはある対抗策を思いつく、うまくいくかどうかわからない、自分の相棒、そして憧れの人物がこちらの狙いに気づいてくれなければ―― ――いや、絶対に気づいてくれる! スバルの心に、この二人に対する疑いなど欠片もない。思うが早いか、スバルは声を上げる。 「ティア! クロスシフトD!」 「なっ!? 何言ってるのよスバル! こんな状況で……それに、魔法は消されちゃう!」 「――っ!? ティアナ、スバルの言う通りにして、ヨハン君! お願い、スバルに翼を!」 スバルとなのは、二人の言葉にタイタンを含む全員が困惑する、 しかしヨハンはいち早くその意味に気づき、カードを引き当てる。 「サファイヤ・ペガサス、召喚! サファイヤ・トルネード!」 「ちぃ、無駄だ! サンド・ドゥードゥルバグにはどんな攻撃も効かぬ!」 タイタンの言葉通り、サファイヤ・ペガサスの放った竜巻もかわされてしまう、 だが、ヨハンは不適に笑いかける。 「確かに宝玉獣の攻撃でさえもそいつには効かない、だが、それは1ターンに一度だけだ!」 「何を言うかと思えば、コバルト・イーグルはまだ攻撃できる状態ではな――!?」 「そう、デュエルに関わらなくても攻撃できる人はいる……あなた自身がスバルを攻撃したことで教えてくれた!」 なのはがサンド・ドゥードゥルバグへと狙いをつける、 タイタンはその姿に慌てて場のカードを発動させた、それが狙いだとも気づかずに。 「ディバイーン、バスター!」 「罠カード! マジックドレイン!」 発動された罠によってなのはの魔法はかき消され、タイタンは冷や汗を拭う、 だが、直後に聞こえた声によってその表情は凍り付いてしまう。 「クロスファイア……シュート!」 「しまった! 罠が間に合わん!?」 「うおおおぉぉぉぉ! クロスファイア……バスター!」 タイタンが対抗策を思案する間も与えず、 オブライエンに頼んで投げ飛ばしてもらったスバルは、サンド・ドゥードゥルバグに魔力球を叩き付けて破壊する。 「ぐぅぅぅ!!」 ―タイタン LP3400― 「タイタンのライフが減った!?」 「まさか、ガール達のマジックにも攻撃力があるのか!?」 「くっ! だが、そのまま砂に埋もれることは避けられまい!」 この時にタイタンの犯したミスは二つ。 一つはなのは達への牽制は一回で十分だとトラップカードを一枚しか伏せておかなかったこと。 そしてもう一つは、本来のデュエル相手であったヨハンを軽視しすぎたことだ。 「サファイヤ・ペガサス!」 「お嬢さん、大丈夫か?」 「うわぁ! ありがと、このまま行こう!」 「おう!」 スバルが砂に叩き付けられる直前、スバルはサファイヤ・ペガサスの背に乗せられ助け出される。 そのまま驚愕しているタイタン目掛け、体勢を立て直したコバルト・イーグルと共に攻撃をしかける! 「ディバイーン……トルネード!」 「コバルト・ウイング!」 「ぐわあああああああ!!」 ―タイタン LP0000― 「やったぜ、ヨハン!」 タイタンは倒れ、蟻地獄も消えていく。 ヨハンの下へみんなが駆け寄り、デスベルトが作動しヨハンは顔を歪める。 「ヨハン、大丈夫か?」 「ああ、俺は平気さ、それよりすまない。俺のせいで余計な怪我をさせちまった」 「ううん、全然平気だよ、丈夫さだけが取り得だから!」 謝るヨハンに、ペガサスに乗ったままのスバルは笑いながら返す。 その様子を見ていたなのはは、妙な事に気づいた。 「スバル……傷は?」 『え?』 全員がスバルの足を見る。 そこにはモンスターに噛み付かれた痛々しい傷跡が―― 「……ない」 「スバル、立てる?」 「えっと……うん、平気、歩けるし全然痛くないし……あ、ちょっと離れてて、ウイングロード!」 困惑しながら、試しに先ほど発動できなかった魔力の道を生み出そうとすると、あっさりと作り出される。 「これって、どういうことなんだ?」 「デュエルの最中に受けたものは、デュエルの時にしか残らない、って事なのかも……」 「そうか、ライフポイントもデュエルごとにリセットされる、そう考えれば納得できる」 多少無理矢理なところがあるが、そうと考えるしかない。 十代達はそう結論付けて潜水艦へと足を進めるのだった。 続く 十代「くっそぉ! 潜水艦の中でまで襲ってくるなんて! 急がないとレイがやばいってのに!」 なのは「落ち着いて十代君、出口を塞がれたなら、別の場所に作ればいい!」 次回 リリカル遊戯王GX 第四話 潜水艦の罠! 打ち破れディバインバスター! 十代「すっげぇけど、怖ぇ……」 なのは「……何か言ったかな?」 十代「今回の最強カードはこれ!」 ―ペガサスに乗った魔法拳士― 攻撃力2400 防御力2000 融合カード 「スターズ3 スバル・ナカジマ」+「宝石獣サファイヤ・ペガサス」 守備モンスターを攻撃した時そのモンスターを破壊する(ダメージ計算は行う) 守備モンスターの守備力より攻撃力が勝っていた場合、その分だけダメージを与える なのは「スバルに翼を与えてくれた、ヨハン君に感謝しないとだね」 十代「それじゃ、次回もよろしくな!」 前へ 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER 第九話「対面」 「じゃ、よろしく頼むぜ。できるよな?」 「ちょいと時間はかかるけど早めに仕上がるように努力してみるニャ。」 会話するジェイと武器屋のアイルー。彼等の隣にあるテーブルには大きな袋と二本の刀。ジェイは頷くと立ち上がる。 バン、と紙幣をテーブルに叩きつけるように置いていく。札束が三つと小銭が数枚、ジェイはそれを見てちょっと名残惜しそうな顔をしていた。 「まったく、ここに来ても金を払わなきゃならないのかい?」 「商売だからニャ。それにシャーリーさんに設備の使用費も払わなきゃいけないからニャ。」 「ご苦労なことで。」 ドアに向かって歩き、傍らに置いてあった太刀「鬼神斬破刀」を背負うとさっさと部屋から出て行く。このあとは確かミーティングだかなんだかがあるはずだ。 おそらく上からクエストでも受けたのだろうか。どんな相手と戦うのだろう、不安によく似た期待がこの胸を満たす。 歩きながらアイテムポーチの中身を確認して、会議室の前に立つと勢い良く扉を開けた。 会議室に入るとしかめっ面をしているはやてが目に入った。横には同じようなしかめっ面をしたフェイトとなのは。次にドクとゼクウ。 「はやて、これでハンター組揃ったぞ。用件を聞かせてもらおうか?」 「とりあえず、これを見て欲しいんよ。」 ゼクウが口を開くとはやては三枚の紙を取り出し、デスクに置いた。三枚の紙には別々の依頼内容が書かれており、場所もさまざま。 依頼の紙にクリップで留められてあったのはその場所に出現したモンスターの写真。どれもこれも見覚えがあってむしろ懐かしい。さて、どうやって写真撮って生き残れたんだ? 一つは地上本部地下施設に巣食ってしまったモンスターを討伐せよ。のことだ。続いてモンスターの写真に目を通す。 白い身体に伸びる首、目、鼻がないヒルのような不気味な顔を持つ飛竜、「フルフル」。 担当する小隊はライトニング。つまりフェイト達の小隊とともに狩りにいくというわけだ。後ろを向き紙をヒラヒラするとゼクウが頷いてから取る。 「では、このクエストは俺が受けよう。」 「よろしくお願いします。」 「うむ。」 二つ目は保護施設と監獄の防衛と言い終わる前に紙をドクに取られてしまった。代わりにドクが声を出して内容を読み上げる。 そしてそのクエストの紙に留めてあった写真を見ると白い鎧のような甲殻を持った竜が口から熱線を吐いて施設を破壊している場面が写っていた。 こいつは鎧竜、「グラビモス」だ。何故かドクの拳に力が入っているが特に心当たりはないためなにも言わないことにした。 担当小隊はいないらしく、かわりにそこの保護施設で更正プログラムを受けている者達が協力してくれる、と書いてある。 「このクエストは私が受ける。」 「はい、わかりました。」 「……あぁ。」 ドク、何か因縁でもあるのだろうか? さて、三つ目だ。こいつは…地上本部の周囲に巣食ったモンスターの討伐だ。 写真にはジェイが良く知っている相手が写っていた。橙色と青色のまだら模様をしていたその姿は四年前、雪山で見た飛竜。 ジェイは眉を顰めて写真をじっと睨みつける。どちらにしろ残ったのはこのクエストだから受けなくてはならない。 その相手、轟竜「ティガレックス」。 担当小隊はスターズ。なのは達の部隊、これは何かの因縁というやつだろうか?なのはを見るとやはり表情が暗い。確かヴィータもこの小隊だっけか。 「ということは俺がこのクエストを受けることになるな。」 「よろしく……お願いします。」 「こちらこそ頼む。」 全員の様子を伺ってからはやては立ち上がって口を開く。 「早速で悪いけど、一刻の有余もないんや。出撃するで。」 「「「「「了解……!」」」」」 五人の声が重なり、皆は会議室を出て行った。 会議が終わり数時間後にハンター組の一人、ドクは保護施設に降り立った。 「じゃあがんばってくださいね。ちゃんと、生きててくださいよ?」 「努力はするさ。」 アルトが操縦するヘリがドクを降ろすとプロペラを回し、空中に飛立つ。ヘリを見送り、あたりを見回してみる。 そこは写真で見る景色とはかなり違っていた。半壊した施設に何かで溶かされて穴があいている壁。これもグラビモスの仕業と考える。 おそらく溶けた跡が残る壁はグラビモス自慢の熱線でやられたのだろう。とにかく酷い有様だ。 気付けばドクの前に薄い紫の髪の少女が立っていた。 「あなたがドクさんですか?」 「本名ではないがね。まぁ、そうだ。」 「私は……」 「ふむ、ギンガ・ナカジマでよかったかな?」 「え?どうして私の名を……。」 「ミーティングで名前を聞いた。それだけさ。」 「はぁ……。では、こちらへどうぞ。」 自己紹介というよりかはただの名前の確認をするとドクはさっさと案内された道を歩く。もちろんギンガとは会話せずにただ歩く。 ギンガは時々不信感が溢れた視線でドクを見るがはやてが紹介してくれた人物なのだから何も無いと思った。というか、そう信じたかった。 一方のドクは表情に焦りが混じっている。歩調もギンガよりも速くなっているし辺りを何回も見回している。とある箇所に出ると歩を止めた。 視線の先には七人の少女。その姿を見た瞬間ドクの雰囲気は少しだけ和らいだ。だが少女達の表情は暗い。ドクは少し間をおいてから話しかける。 「やぁ、君等が現地の協力者かい?」 「あなたは……?」 まず最初に声を出したのは隻眼の少女、チンク。チンクもそうだが皆がドクに向ける視線は殺気にもよく似た警戒があらわになっている。 「ここら辺に出現したモンスターを狩りに来たハンターさ。」 「ということは貴方が八神はやての言っていた助っ人?」 「そういうことになるな。しかし、君等は武装していないようだが。」 チンクの隣にいた茶色で長髪の少女、ディエチが次に口を開ける。 「私達は、あくまでここに保護されてる身だから。」 後ろを向き、ギンガを見る。ギンガは「こればかりは……」とどこか辛そうな顔で視線を逸らした。ドクは彼女の言葉を理解した。ここにいる彼女達は保護下に置かれていて武装が 許されていない。たとえグラビモスが攻めてきてこんな状況でもだ。ふと想像してみる。ここにいる魔導士は全滅?見る限り修理しているものしか見当たらない。 「ここの戦力はどうなってるんだ?」 「ほぼ全滅です。」 「では聞こう、ギンガ。モンスターと戦ったときどんな状況だったかね?」 「はい、それは……」 ギンガの口から戦ったときの状況が話される。白い龍がいきなり現れて施設を破壊。口から発せられた熱線により人や壁が溶けて、まさに地獄絵図のようだった。 応戦し、なんとか倒すことに成功したが次に現れたのは白い龍と同じ姿で黒い甲殻をもった龍。恐るべき甲殻の硬さで魔導弾が中々効かずに苦戦。 右目を潰したが怒りが爆発。突然身体から発したガスで付近のものが火だるまになってしまったという。 撤退して今に至る……というわけだ。 一つ気付いた。狩りにいく相手はグラビモス。しかしただのグラビモスではない。黒い甲殻を持ち、かなりの防御力を持つ『亜種』だ。 戦力には期待できない。というよりは一人で戦うことになるのと等しい。……だとしたら?また少女達へ視線を移す。 ………ここは一人で戦うしか選択肢はないようだ。 夜、ドクは自室で刀を研いでいた。刀は自分の顔が見えるくらいに、実に美しく、そして切れ味も抜群になるほど研がれていたのだが彼はその行為を止めない。 自分でもわからないが作業をやめようという気になれない。研いでいるのは狩った相手から武具の素材を剥ぎ取る時だけに使用するナイフだったのだが何故か、 彼は研がないといけないような気がしていた。不安を紛らわす…というのも少しだけあるのだが。ライトの明かりが反射するほど光っても、止めない。 刃と砥石が擦れ合う音が部屋の中に響く。 自分が必要ないと言っているのに結局少女達全員と自己紹介するハメになっていろいろと説明していると次第に頭の中に何かが渦巻いていく。 「まぁ、私には関係ないと思いたいがね。」 ヒュン、と投げると数回転、落下して机に刺さる。次にアイテムボックスから自分がよく使用している防具「暁丸・覇」を取り出して装着しはじめる。 右手に籠手をつける前に鉤爪の付いたグローブをつけるのも忘れない。握り拳を作ると指の部分に通っている赤い線が発光、手の甲にある金色の宝石も光り始めた。 アイテムポーチに入れられるだけのアイテムを詰め込み、兜を被ろうとした瞬間ドクは何かを耳にした。 始めは雷鳴かと思った。しかしテンポが一定だ。 重く響く雷鳴によく似た音は近くなる。 途中で何かが崩れ去る音と、唸り声。 ドクは確信する。 「やれやれ、どうやら徹底的に潰さないと気が済まない性質らしいな…!!」 兜を被り、ガンランス「ディープフィッシャー」を取り出すと自動ドアが動く前に思い切り開け、走り出していった。 番外その6「グラビモス」 ふむ、たまにはこのドクが説明するとしよう。 グラビモスは竜盤目 獣脚亜目 重殻竜下目 鎧竜上科 グラビモス科 で別名は鎧竜。 主に火山域に住む大型の飛竜で成長にとともに外見が大きく変化するため、幼体はバサルモスと呼ばれ区別されているのだ。 …変える必要あるのかね? ほぼ全身が強固で耐熱性に優れた甲殻に守られており、短時間なら溶岩の中を潜行しても大丈夫なほど。便利なものだね。過熱した体を冷ます為に、 新陳代謝の一環として爆炎を体外に吐き出す。実は熱線も、体内に溜まった熱を排出することで形成されるんだ。以上の能力が一段と強い個体は甲殻が黒色化。 バサルモスは毒ガスを噴出するが、こいつは睡眠作用のあるガスを噴出する。どう変わったのかはまだ解明されていないのだが……。ククク、いつか解明してみせるさ。 どうやらバクテリアとの共生のおかげで鉱石までも食料にしてしまうらしいな。そのバクテリアの活性化のため、紅蓮石や爆発性のある火山岩を好んで食す。 原色の甲殻は灰色で亜種は黒…とされているが原種の黒化個体で厳密には亜種とはいわない。ようするにバサルモスからの成長過程で黒くなったというべきかな? ……そういえばどこかの誰かが生身で溶岩の中から出てきたのを見たことがあるぞ。人なのに。 戻る 目次へ 次へ
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何処かで誰かが悲鳴を上げている。 ― 魔法士【sorcerist】 ― それは、悲劇で ― モールド【mold】 ― あるいは、不幸で ― 魔族【The malevolent】 ― 世界は、きっと優しくなんかなくて 「クソッタレッ今日だけで4件だぞッ! 一体何が起こってるッ?!」 人は、きっとそんな世界に翻弄されるしかなくて 「シャロン……あなたも感じるの?」 「にゃぉ」 「……不思議な気配。魔族…違う。もっと、温かい……」 ……それでも 「おぉぉおおおおぉぉぉッ!顕(イグジスト)ォォッ!」 それでも、この世界には 「……流石に……こいつはもうだめかもしれないな……」 悲劇を、不幸を、優しくない世界を、変えようとする者がいて 「いくよッレイジングハート!」 <All right.> 「バルディッシュ、一瞬で決める!」 <Yes,Ser> あるいは、それもまた世界が望んだ物語で 「冗談だろ……オイ。ありゃなんなんだ、俺は夢でも見てるのかね」 「い、いえ……多分、私も見てるから夢じゃないと思います……」 だからそう、きっとこの出会いも、定められた必然で 「皆さん、大丈夫でした?」 「…怪我…してません…か?」 その日、戦術魔法士(おとこ)は魔法少女(てんし)達と出会った。 魔法少女リリカルなのは x ストレイトジャケット 「ショウジョタチのツバサ ~The Angels~」 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ
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法戦記リリカルなのはForceNEXT Design09 フッケバイン1の剣士・サイファー!シグナムとアギトを単独で打倒し、初めて『リアクト』の威力を明かした…… サイファー×ディバイダー944ケーニッヒ・リアクテッド ディバイダー944ケーニッヒ・リアクテッド リアクター「ケーニッヒ09」によってリアクトしたディバイダー944。 二振りの長大な片刃刀の形態を取り、強力な切断能力を誇る。 どちらの刀身からも分断(ディバイド)の発動が可能で、一般的な魔力防御のほぼすべてを無効化する。 刀身を利用したエネルギー射撃も可能だが、その威力や命中精度は本人曰く「いまひとつ」で、 もっぱら「近づいて斬るまでもない」と判断した相手にのみ使用される。 近接武器としての刀身強度も高く、サイファー自身の病化特性「対鋼破蝕」への耐性も備えている。 ディバイダー944ケーニッヒ・リアクテッド設定画 引っぱるとシリンダーが出ます 描く機会はなさそうですが… このブリッジで装甲を支えます
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妄想戦士リリカル・ヤマモト 第三話「萌えっ娘のためならば……捨ててくれようこの命!!」 先日の八神家の面々との接触を経て山本一行は事件への介入を控えるようになった。 別に遠慮してるとかではなく、ただ単に萌える対象を愛でる変態的な理由からだがアースラスタッフには喜ばしい事だった。 そして彼らは今海鳴で有名な喫茶店、翠屋に来ていた。 もちろんコーヒーやスイーツを楽しむ為ではない。 「うっひょおおおお!!! 見ろあのめがねっ娘を!! なんという萌えっぷり!! ドジっ娘要素を持った天然系で声が白石涼○なんて素晴らしすぎじゃあああああ!!!」 喫茶店にあるまじき奇声を上げて狂喜乱舞するのはめがねっ娘教団教祖である南雲鏡二。 そして、そんな彼にその他の変態達も雄叫びを上げる。 「うむ! 正にめがねを掛ける為に生まれたような逸材だ!! 100モエー(萌えの単位)は軽く超えるな!!」 「あんまり声を出すんじゃねえ! フィギュアの原型が上手く作れねえだろうが!!」 山本と渡辺が南雲に応えるように吼える、その3人と席を同じくする松下は涙を流しながら嘆いていた。 「なんで俺まで、付き合わされてんだよ…」 嘆く松下をよそに変態萌え集団3人はウェイトレスのめがねっ娘でなのはの姉である美由希に生あったか~い視線と奇声を送り続ける。 「萌えるめがねっ娘のウェイトレスさん! めがねコーヒー御代わり!!」 「フィギュアの原型作るから、1ミリも動くんじゃねえ!!」 「とにかく萌える恥じらいとセリフ追加あああああ!!!!」 3人の凄まじい迫力に美由希は涙目になって怯えまくる。 無理もない、彼女は生まれてこの方、こんな変態的で萌え至上主義の珍生物を見たことは無いのだから。 「なんかこの人達こわいよ~!」 数分後、山本達が翠屋から追い出された事は説明するまでもない。 ちなみに松下は店長の高町夫妻にひたすら頭を下げて、常識人故の苦悩を味わった。 「さてこれからどうする?」 「もちろん素晴らしいめがねっ娘を探すのですよ、山本殿」 「フィギュアの原型にふさわしい女を見つける」 「黙って帰るって話は無いんかい!!!!」 もちろんだが松下の意見は全力で無視されて、山本一行は海鳴萌えっ娘探索へと移る。 ただの散歩と言う事なかれ、山本の萌えセンサー(原理不明、まあ鬼太郎の妖怪アンテナみたいなもんである)を頼りにしての探索であるが故に彼らは正確に萌えへと向かうのだ。 「むう!! 萌えセンサーが急反応しているぞ、これは良い萌えがあるな。では行くぞ者共!!!」 そしてセンサーが急激に反応、山本に引き連れられた一行は二人の少女に出会う。 美しい金髪に気の強そうなハーフの少女、そして軽くウェーブのかかった黒髪の少女である。 二人の少女は正に美少女といって差し支えない逸材であり、これに反応しない山本一行ではない。 「おおっ! 正にこの金髪っ娘はツンデレだな!! 二人合わせて240モエー!!!」 「めがねの似合いそうなお淑やか系のお嬢さんだ~♪ さあめがねを掛けなさい!!」 「今からフィギュアの原型つくるぞ! 一歩も動くな! 息もするな!!」 周囲の冷ややかな視線も何のその、山本・南雲・渡辺は一瞬で不審者街道まっしぐらな発言をぶちかます。 もちろんだが松下が涙を流しながら制止しようとムダに突っ込んだりもしたがそれは何の意味も無かったりした。 「ひいっ!! 何、この人達っ!?」 「ア、アリサちゃん…何か恐いよぉ」 「すずか、眼を合わせちゃダメよ……こういうのはいつ襲ってくるか分からないんだから」 二人の少女の名はアリサとすずかは山本達の異様な様に今まで感じた事のない恐怖を感じて震える。 その様子に常識人松下はさっそく助け舟を出す。 「ああ、もう! 恐がってるだろうが、これくらいにして帰るぞ!!」 「うっせええぞ松下あぁっ! 貧弱な坊やは黙ってな!!」 いつもの珍騒動を繰り広げる山本達、そんな時突如として周囲の空間が異様な沈黙を呈して人影か消える。 突然の事に驚く山本一行にアリサとすずか。 「ア、アリサちゃん…」 「な、何なのこれ?」 「これはまさか、結界?」 周囲の急変に思わず声を漏ら松下、そんな時彼らに聞き慣れた声がかけられた。 「そこの人…って! や、山本さん!?」 「おう、なのは。こんな所でどうした? また魔法少女の仕事か?」 「何なのは? この変態達と知り合いなの? っていうか何よ魔法少女って?」 「えっと…それは説明すると長くなるんだけど……ってもう追いつかれた!!」 なのはは後ろを振り返り、後方の敵を見据える。 そこには黒い羽根を持った銀髪紅眼の女性が宙を飛んでこちらに接近していた。 「なんだ? あのいかにも神話系なファンタジック美少女は!?」 「おお! 縁無しめがねが似合いそうですな!」 「っていうかフィギュア作らせろ!!」 お構い無しでいつもの変態発言をぶちかます山本一行、だがその女性は唐突に攻撃魔法を放ってきた。 「ブラッディダガー」 短い呪文と共に赤い魔力の剣が飛来する、その衝撃に爆音と煙が立ち込める。 だが煙が晴れて姿を現したのはボロボロの松下を掲げた山本の姿であった。 「“松下シールド”……役に立ったぜ松下、お前の死はムダにはしねえぜ」 「ま…まだ死んでない…」 あろう事か山本は近くにいた松下を盾にして攻撃を防いだのだ、正に悪魔の如き所業である。 「おい、なのはよアイツはなんだ?」 「えっと…闇の書っていう魔道書なんですけど、はやてちゃんって女の子と融合して…」 「はやて? 八神はやてって子か?」 「はい、そうです……知ってるんですか?」 なのはの質問に答える間もなく、山本は次の瞬間には闇の書の意思の下に跳躍した。 ちなみに20メートルくらいの高さがあったがこの男に常識は通用しない。 「こんのバカたれがあああ!!!」 「ぐわああ!」 そしてあろう事かぶん殴った、闇の書の意思を、グーパンチで。 恐らくは闇の書にこんな事をしたのは後にも先にもこの男だけであろう、常識で測れない妄想戦士それが山本一番星である。 「き、貴様…何をする…」 「“何をする”じゃねえええ!!!」 「はぐうう!!」 間髪入れずに2発目のグーパンチが唸りを上げて闇の書の意思に決まる、ちなみに瞬間的に張られえていた防御障壁は無理矢理ぶち抜いた。 殴られた闇の書の意思は鼻血までだして涙目になる、っていうか殴られたのなんて初めてだ。 「に、二度も殴ったな……主にも殴られたことないのに…」 「じゃかしいわいボケナス!! あの関西弁系、病弱属性な萌えっ娘を踏み台にして登場するなんてけしからん奴にはこれでもまだ足りねえっつうの!!!」 「訳の分からん事を!!」 さしもの闇の書も、この山本の理不尽っぷりに怒りを感じたのか表情を歪めて怒気を放つ。 そして山本の周囲に無数の雷撃の刃が出現する、それはフェイトの使う魔法フォトンランサーを蒐集したデータから応用したフォトンランサー・ジェノサイドシフトである。 即座に放たれた攻撃に爆炎が上がり、一寸の逃げ場もない攻撃を受けて山本が地に落ちた。 「山本さん!」 落下する山本になのはは悲鳴を上げる、だが彼女の心配は」杞憂に終わる。 「渡辺ブーメラン!!」 技名の雄叫びと共に渡辺がブーメランの如く旋回して山本をキャッチした、着地した山本は服こそ汚れていたが大事は無いようだった(あの攻撃で煤だけで済むところは異常だが)。 「大丈夫か?」 「ああ、大したことねえぜ」 渡辺の言葉にそう答えながら山本は上空の闇の書の意思を睨み付ける。 「おい闇の書とやら!!」 「お前もその名前で私を呼ぶのか?」 「それじゃあお前の名前はジョセフィーヌ! 設定年齢19歳の堕天使見習いでちょっぴりシャイな無表情系キャラだ!!」 「なっ……なんだその名前は!? 勝手に付けるな!!」 「俺の脳内設定だ! 文句あっか!?」 「あるに決まってるだろうが!」 「まあ、それは置いといてだ。早くはやてを解放しな、じゃないとかなり切ない目に合うぜ?」 「それは出来ない、私には主の願いを叶えなければならない…」 「暴れるのがはやての望みかよ? なら力ずくで止めさせてもらうぜ」 「……お前は何故戦うのだ? 魔道師でもないお前に勝ち目は無いぞ?」 憂いと悲しみに満ちた瞳で山本を見つめる闇の書の意思、覆しがたい戦力差だが山本は不敵な笑みを見せる。 「ふっ……俺を誰だと思ってやがる!! 萌えの申し子、山本一番星!! 萌えっ娘を守るためならば命なんぞいくらでも捨ててやるぜ!!!!」 こうして妄想戦士達と闇の書との壮絶な戦いが始まった。 続く。 前へ 目次へ 次へ
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1:クラナガンの異変編 仮面ライダーディケイド本編が終了した後も門矢士の旅は続いていた…のだが…実はその途中で 旅の仲間とはぐれてしまい一人になってしまっていたのだった。 「海東の奴はともかく…夏みかんとユウスケは一体何処へ行ってしまったんだ? まあ良いか… 下手に探し回るよりもこのまま進もう…。いずれ合流出来るだろ。」 彼は旅の中で一人になった事が今まで無かったわけでも無い。故に探し回らず、いずれ合流出来る事を 考え、あえて自身の愛用バイクであるマシンディケイダーを走らせ前進させるのであった。 そうして旅を続ける中、士が世界と世界を繋ぐオーロラを通ってとある世界に辿り着く。 「ここは…リリカルなのはの世界か…。」 士を乗せたマシンディケイダーが到着した先は丁度ミッドチルダ時空管理局地上本部前の道路だった。 故にここが『リリカルなのはの世界』である事を確信していたのであったが…何か違和感を感じていた。 「にしては…少し物々しい雰囲気だな…。」 周囲を見渡してみると、戦闘服を着用しデバイスで武装した局員や釘バットや木刀を持った一般人が 彼方此方におり、まるでこれから戦争でもしようと言わんばかりの物々しい雰囲気を放っていた。 そして彼らの会話に耳を傾けて見ると… 「おい! そっちにはいたか?」 「いや、こっちもまだ発見出来ない。」 「畜生…俺達を裏切る様な真似しやがって…絶対ぶち殺してやる…。」 やっぱり物騒な会話が聞こえて来る。これは何かがおかしいと士も考えるのであったが、 間も無くその予感が確信に変わる発見をする事になるのである。 士が何気なく通りすがった先に立っていた一本の電柱。そこに一枚の張り紙が貼られていたのである。 それは良くある『この顔にピンと来たら110番』って言う指名手配書だったのだが、 その紙に印刷されていた写真と文字が問題であった。 「なん…だと…?」 士は絶句した。何と言う事であろう。高町なのはとユーノ=スクライア。 この二人が指名手配されていたのである! 「これは明らかに変だぞ…。探りを入れて見る必要があるかもしれないな…。」 なのはとユーノの二人が一体何をして指名手配される事になったのかは分からない。 しかし、それでもこの二人が指名手配されると言う事実は異常事態である。 故に士としても黙って見ている事は出来ず、これに関して探って見る事にしたのだった。 クラナガン郊外の廃業都市。既に寂れて無人となったその中の一つの建物の中に二人が座り込んでいた。 それはなのはとユーノの二人だった。 「はぁ…はぁ…。ここならしばらくは追っ手は来ないよ…。」 「ごめんよなのは…僕の為に…。」 「そんな事言わないで…。」 何故追われる身となったのかは依然として謎であるが、なのはは変身魔法で子供の姿に、 ユーノはフェレットの姿になる事で消耗を抑えねばならない程にまで疲弊していた。 そして廃業都市のボロボロの建物の陰に隠れ、追っ手の脅威に震えながら わずかなレーションを分け合って食べていたのだったが…ついにここにまで 非情な追っ手が迫って来ていたのだった。 「いたぞー!」 「見付けた見付けたぞー!」 「あ!!」 一度見付かってしまった途端、廃業都市に続々と追っ手が雪崩れ込んで来ていた。 デバイスを装備した武装局員のみならず、木刀やら釘バットやらで武装した一般人にしか見えない者達が 大勢で一斉に迫って来ていたのである。なのははフェレットの姿になっていたユーノを守るべく右手で抱き、 左手でレイジングハートを握り締めようとしていたのだが、その時だった。 「ちょっと待った!」 まるで追っ手を遮るかの様に一台のバイクが猛烈な速度で駆け寄せ、なのはとユーノの前に止まっていたのである。 それはマシンディケイダーに乗った士であった。 「貴様! 何故邪魔をする!?」 「そっちこそ大勢でよって集って何故この二人を狙うんだ?」 士の乱入によって追っ手の進撃が止まった。突然の乱入者になのはとユーノの二人も何が起こったのかと 困惑した表情で立ち尽くすばかりだった。 建物の中のみならず、その外にまで…。廃業都市を埋め尽くさんばかりの勢いで無数に雪崩れ込んで来ていた 武装集団に臆する事無く士は問う。 「一体この二人が何をしたと言うんだ? こんな大勢で追うなんてやりすぎだろう?」 「なのはは俺達を裏切ったんだ! 信じてたのに…。」 「裏切った? 一体どう裏切ったんだ?」 「なのははフェイトを捨てて淫獣と逃げたんだ! これは我々ファンに対する裏切り行為だ!」 「何…だと…?」 一体何故こんな事になったのか…その理由が明かされた時、思わず士は絶句していた。 「違う! 捨てたんじゃない! 私はもうファンに媚びたレズビアンの真似事に嫌気が差しただけだよ!」 「百合とレズは違う!」 「もう何を言っても無駄だ。フェイトを捨てて淫獣に股開いた時点で俺達のなのはは死んだんだ。 今目の前にいるのはただのビッチなんだ!」 「なるほど……お前らか…噂に聞く百合厨と呼ばれる人種は…。」 なのはとユーノの追われる理由が余りにも突拍子が無さ過ぎて暫し絶句していた士であったが、これで納得がいった。 世の中には『百合厨』と言う女性キャラ同士の百合をもっとも至高とする者達がいる。そしてリリカルなのはの 世界においてはこの百合厨が一番力が強く、そして百合厨の力を利用して発展して来た。 しかし、確かに少女時代においては友情の発展系としてなのはとフェイトの百合に疑問は無かったが、 やがて大人になるに従ってそれはエスカレートし、ついにはレズビアンまがいな行為を連発する様になった。 それはなのは個人にとってもはや我慢出来る物では無くなっていた。なのはとてフェイトの事は好きだが 百合厨が求める物とはまた違う形であり、百合厨に媚びたレズビアン行為に嫌気が差していたなのはは 本編で描かれていない所でこっそり幼馴染のユーノと付き合っていたのだったがそれさえも百合厨に察知されてしまい、 掌を返した百合厨に反逆され、この様に追われる身となっていたのだった。 「俺も旅の中で色々見て来た…。彼氏が出来たり、実は元彼がいた事が発覚した途端にお前達百合厨に よって追い立てられる女をな…。例えばかんなぎの世界とか凄かった。そして今この二人さえ狙おうと言うのか?」 百合厨は女性キャラ同士の百合を尊ぶと同時に女性キャラに彼氏が出来た途端に掌を返し、 ビッチだの何だのと叩きまくる。この光景を士も様々な世界で見て来ていたのだった。 「それの何がいけないんだ!? なのフェイの百合こそ世界の真理だ! なのフェイの百合があったからこそ リリカルなのはと言う作品はここまでの人気作となったのだぞ!」 「別に百合自体を否定してるわけじゃない。百合たい奴は勝手に百合ってれば良い。だが…アイツは違うだろ!? アイツは百合を嫌がっているじゃないか!! それなのに百合を無理やりに押し付けようと言うのなら… 俺はお前ら百合厨からあいつ等を守る!!」 武装集団=百合厨の大軍に向けて啖呵を切った士。これには百合厨も腹を立てていた。 「貴様! いきなり出て来た上に偉そうに………一体何者だ!!」 「俺は通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」 士はディケイドライバーを腰に巻き、さらにライドブッカーから取り出した一枚のカードをディケイドライバーへ差し込んだ。 「変身!」 『カメンライド! ディケーイド!』 その様な電子音と共にディケイドライバーから放たれたエネルギー状の何かが士の全身を纏い、その姿を 仮面ライダーディケイドへと変えていたのだった。 「ディケイドだー!! ディケイドが出たぞー!! さてはリリカルなのはの世界を破壊しに来たなー!?」 「うおー!! ぶっ殺せー!!」 「出来るもんならやってみろー!!」 こうして戦いが始まった。ディケイドは単身百合厨の大軍へ向けて突っかかり、ライドブッカー・ソードモードで 辺り一面に展開された百合厨を次々に斬って斬って斬り倒しまくるのであった。 百合の破壊者ディケイド。百合の世界を巡り、その瞳は何を見る。 そして…そんなディケイドの大暴れをなのはとユーノの二人が呆然と見つめていた。 「ディケイド…。」 「彼が…噂に聞く……破壊者…。」 一度は歴代ライダーを全滅させた事もあるディケイドの暴れぶりは目を見張る物があった。 リリカルなのはと言う世界観…そして作品の人気を支えているも同然の屈強なる百合厨の大軍を ばったばったと倒しまくり…廃業都市は忽ちの内に屍の山に……なってはいたのだが… しかし百合厨はその間も続々と数を増やし、次から次へと廃業都市へ雪崩れ込んでいたのだった。 「何だこいつ等…キリが無い。」 「それだけなのフェイの百合を大勢の人々が支持していると言う事だ! 貴様の存在はなのフェイのみならず リリカルなのはの世界そのものを消滅に導く! 今ここで百合厨の手にかかって死ぬのだ!」 「貴様…鳴滝…!?」 何と言う事だろう。百合厨の大軍の中に一人の薄茶色のコートに身を包んだメガネの中年男の姿……。 それこそ彼方此方の世界でディケイドを世界を破壊する悪魔と言いふらしまくっている反ディケイドの 特攻隊長とも言える男…鳴滝だった。 「鳴滝ー! 百合厨になってまでディケイドを倒したいか?」 「黙れ! 貴様は今度こそここで死ぬのだー!! 行けー!!」 「うおおおおお!!」 鳴滝がディケイドを指差すと共に大勢の百合厨が一斉にディケイド目掛け突撃する。 これは非常にまずいと感じたディケイドは一度マシンディケイダーの所へ駆け戻っていた。 そして座席に座りハンドルを握ると共になのはとユーノの方へ話しかけていた。 「おい、お前らも乗れ! とりあえずここは逃げるぞ!」 「え? で…でも…。」 「でもじゃない! 死にたいのか!?」 「いや…ほら…だってノーヘルは良くないって…。」 「だからそういう事言ってる場合じゃないだろ!! 良いから乗れ!!」 「はっハイ!」 ノーヘルでバイクに乗るのは如何な物か…とマシンディケイダーに乗る事に 躊躇していたなのはであったが、今はそんな事を気にしている場合では無かった。 百合厨の大軍はすぐそこまで迫っているのだから。故に大急ぎでなのはは ディケイドに抱き付く形でマシンディケイダーの後部座席に乗っていたのだった。 「しっかり掴まってろよ!」 ディケイドは猛烈な速度でマシンディケイダーを走らせた。マシンディケイダーは その辺のバイクとは馬力から何まで桁違いの性能であり、忽ちの内に時速数百キロにまで加速する。 なのはもやろうと思えばその位の速度で飛ぶ事が出来る事は出来るが、他人が運転するバイクに 乗った状態でその速度を出されるのはそれとは全く違った感覚であり、振り飛ばされない様に ディケイドに力一杯しがみついており、フェレットの姿になっているユーノもまた なのはの左肩に力一杯しがみついていた。 さしもの百合厨の大軍もマシンディケイダーの速度には追い付けなかった。そしてクラナガンから 離れた田舎道に入った所でディケイドはマシンディケイダーを一度止め、変身を解いて士に戻っていた。 「ここまで来ればしばらくは追って来ないだろう…。」 「あ…あの…ありがとうございます…。」 「礼はいらん。当然の事をしたまでだ。」 なのはとユーノは見ず知らずも同然の二人に対して何故士がここまでしてくれるのか不思議でならない。 だが、その後でユーノは申し訳なさそうになのはに対し謝っていたのだった。 「ごめんよなのは…僕なんかの為に…世界そのものを敵に回させてしまって…。」 「だからそんな事言わないで。ユーノ君一人が悪者にされて叩かれるなんて間違ってるし…私も嫌だよ。」 なのはとフェイトの百合と言う名のレズビアンまがいな行為が大勢の百合厨に支持される陰で ユーノはなのはに最も近くにいる男として百合厨の怒りを買い、淫獣と罵られ叩かれていた。 それがなのはにとっては嫌だった。なのはが世界を敵に回してでもユーノと共に逃げたのはそこも要因であった。 「私とフェイトちゃんがレズみたいな事をして…ユーノ君一人が憎まれ役になって迫害されなきゃ 『魔法少女リリカルなのは』って作品が維持出来ないのなら…いっそ破壊して欲しい……。 お願いです! 貴方が噂通りに破壊者だと言うのなら…いっその事一思いに破壊して下さい!」 「なん…だと…?」 これには士も戸惑った。確かに今まで旅の中で『破壊者』『悪魔』と罵られ攻撃された事は 多々あったが、この様にむしろ破壊を乞われる事は非常に珍しい事だったからである。 とは言え、士にもまだ分からない部分があった。 「しかし、まだ解せない部分もある。そもそも百合厨なんて所詮はヲタの集まりだろ? それが何故あそこまで組織的に動けるんだ?」 「そ…そう言われてみれば…。」 「これは裏で糸を引いてる奴がいると見たな…。」 確かに言われてみれば士の言う通りかもしれないと言えた。いくら百合厨の発言力が強いと言っても 言い換えれば発言力が強いだけに過ぎない。それがこの様に大勢で直接実力行使に出て来る事は異常事態であると言えた。 「じゃ…じゃあ…もしかしてあの…確か…鳴滝って人とか…?」 「いや、あれはただ単に百合厨の流れに乗って俺を倒そうとしてるだけに過ぎん。もっと別にいるな。」 「一体誰が………。」 百合厨が組織的に動ける様になった理由は何か…。三人はそれぞれ考えを膨らませ、暫し沈黙が起こるが それで特に何が起こるでも無し、士は再びマシンディケイダーのハンドルを握っていた。 「ま、こんな所で考え込んでいても仕方が無い。お前ら二人とも行く当てが無いんなら俺に付いて来い。俺が匿ってやる。」 「あ…ありがとうございます…。」 士はなのはとユーノを匿うと言う。それには逃げる当ての無かった二人も思わず礼を言い、 三人を乗せたマシンディケイダーは再び発進するのであった。 士が向かった先は、実質彼の家とも言える光写真館。そこでなのはとユーノの二人を匿おうとしていたのだったが… 不思議な事に光写真館は人っ子一人いない無人だった。 「ここにもいないか…皆何処に行ったんだ? 爺さんまでいないなんて…。まあいい…とにかく上がってくれ。」 「あ…はい…。」 なのはと、その左肩に乗ったフェレット形態のユーノは申し訳なさそうに玄関から光写真館の中に入り用意された椅子に座っていた。 「ここ…写真館なんですね?」 「まあな。」 とりあえず士はなのはとユーノに光写真館の中にあった飲み物・食い物を出しつつテレビのスイッチを入れるのであったが、 丁度何か特別報道番組が組まれ放送されている様だった。 「これは………。」 明らかに何かが起こっている事を悟った三人は思わずテレビ画面に注目した。 『大変です! つい先程、謎の武装集団によって時空管理局ミッド地上本部が占拠されました! あ! カメラさん! あちらに向けて下さい! 犯人側からの声明が行われる様子です!』 「謎の武装集団…。」 「いつの間にかに凄い事が起こってる…。」 なのはとユーノの二人が追われる身となっていた間にさりげなく管理局ミッド地上本部が 謎の武装集団によって占拠されると言う異常事態。彼らは一体何者なのか… そしてミッド地上本部の方では、時空管理局のマークが描かれた旗が降ろされ、代わりに 彼ら武装集団のシンボルと思しき旗が上げられていた。 『時空管理局ミッド地上本部は我々百合ショッカーが占拠した!』 「百合ショッカー!?」 占拠された時空管理局ミッド地上本部から続々と出て来た如何にも怪しい男達の中心に立つ 科学者風の老人がその様にテレビ局のカメラに向けて高々とそう宣言していたのだった。 だがそれのみならず、百合ショッカーと名乗る組織の幹部と思しき彼らが一人一人自己紹介をしていく。 『私は死神博士改め…百合神博士である!!』 「じ…爺さん…ま…またこのパターンか……。」 死神博士改め百合神博士。その姿を見た士は頭を抱えてしまった。実は彼の正体は光写真館の主人、光栄次郎である。 しかし、死神博士のメモリの入ったガイアメモリによって死神博士・スーパー死神博士ドーパントになっていた事があった。 そして今回も死神博士改め百合神博士となっていたのであった。 『私は百合ショッカー百合幹部、地獄大使改めガチ百合大使!』 『私はドクトルG(ゲー)改めドクトルY(ユリー)である!』 百合神博士を筆頭として様々な幹部が自己紹介をしていく。そして彼らを称える様に 彼ら側の兵隊と思しき全身タイツ姿の戦闘員達が手を上げ叫んでいたのであった。 『ユリー!!』 『ユリー!!』 『これより我々百合ショッカーは百合の理想郷建設の名の下に世界征服を宣言する!』 これには士・なのは・ユーノの三人は暫し沈黙していたのだったが、ここでユーノが なのはの左肩からテーブルの上に飛び降り、士に話しかけていた。 「あの…士さん…。ショッカーって…あのショッカー?」 「多分そのショッカーだ。少し変わっている様だがな。」 士の言う通りだった。百合ショッカーはその名の通りショッカーが百合の力で強化復活した組織。 例えばショッカーの戦闘員は「イー! イー!」と叫ぶ事は周知の事実であるが、 この百合ショッカーの戦闘員は「ユリー! ユリー!」と叫ぶ程にまで百合に染まっていた。 「まさか鳴滝のみならずショッカーまで百合厨になってるなんて…一体どうしてこうなった…。」 士は頭が痛くなりそうに頭を手で押さえていたのだったが、それだけに留まらなかった。 『諸君! 見よ! このお方が我々百合ショッカーの百合首領! フェイト=T=ハラオウンである!』 「ええ!?」 ここでまたも異常事態。何と言う事か、あのフェイトが百合ショッカーの百合首領となって 彼ら百合ショッカーの百合幹部達の中心に立っていたのである。これにはなのはとユーノもビックリ。 「そんな…フェイトちゃんがどうしてショッカーなんかに…?」 なのはとユーノの二人が愕然とする中、テレビの映像の向こう側では、百合ショッカー百合首領となった フェイトが百合厨と思しき人々から賞賛の声を浴びせられていた。 「おそらくこの為だな。フェイトはリリカルなのはキャラの中でも特に人気があるのだろう? それが百合ショッカーの首領となれば人々は百合ショッカーを賞賛する。これが奴らの狙いなんだ。 フェイトは洗脳でもされた上で首領に祭り上げられているだけに過ぎん。」 「そ…そうなんですか…?」 「俺も一度は大ショッカーの大首領をやってた事があったからな…。」 士もかつて百合ショッカーの前身たる大ショッカーの大首領をやっていた事があった。 しかしそれも単に祭り上げられていただけの事。それと同じ様にフェイトも祭り上げられているだけであると 士は悟っていたのであった。 百合ショッカーの存在はリリカルなのは世界に大勢いる百合厨達には熱烈な支持歓迎を受けていた。 『我々百合ショッカーが世界を征服した暁には、世界各地のゲーム屋から恋愛ゲーを撤去させ、 代わりに百合ショッカー製作の百合ゲー『ユリプラス』を発売させる。』 「おー!!」 「百合ショッカー万歳!!」 「ユリー! ユリー!」 百合ショッカーの志に賛同した百合厨達は続々と百合ショッカーに入り、百合ショッカーは 彼らを百合戦闘員・百合怪人に改造して兵力を続々と増強して行くのであった。 時空管理局とて百合ショッカーの暴挙を黙って見ているわけでは無かった。間も無く本局は 高ランク魔導師で構成された精鋭を百合ショッカーへ向け送り込むのだが…彼らが帰って来る事は無かった。 それどころか… 「ユリー!」 「ユリー!」 「うわー! 百合ショッカーの襲撃だー!!」 逆に百合ショッカーの百合怪人・百合戦闘員達が本局に雪崩れ込み、瞬く間に本局までも陥落させられていたのだった。 「そんな…本局まで……。」 「無限書庫の皆は無事だろうか…。」 百合ショッカーの手によって本局が陥落させられていく様子もテレビで放送されており、 その光景を目の当たりにしたなのはとユーノは愕然とするのみだった。 しかし百合ショッカーが本局を襲撃・陥落させる理由は別にあった。本局を陥落させて間も無く、 百合神博士が複数の百合怪人・百合戦闘員を引き連れて直々に管理世界における犯罪者が拘束されている 軌道拘置所へ向かっていたのだった。 そして軌道拘置所で一人の男が牢から出された。それはかつてJS事件を引き起こした天才科学者 ジェイル=スカリエッティであった! 「ジェイル=スカリエッティだな?」 「おお…貴方は怪人作りの名人と名高い死神博士!」 「如何にも。もっとも…今は百合神博士と名乗っているがな。」 生命操作・人体改造を主に研究していたスカリエッティにとって死神博士はその道の大先輩。 それ故に彼が直々に会いに来ると言う事態は相当な衝撃であった。 「私が現在進めている百合生命体の製作には君の力が必要だ。強力してくれるな?」 「他でも無い死神…いや百合神博士の頼み…。協力しましょう。」 こうして百合神博士とジェイル=スカリエッティ。二人の天才が手を組んだ。 そして二人が作ると言う『百合生命体』とは一体何なのであろうか…………? 一方光写真館では、なのは・ユーノ・士の三人が考え込んでいた。 「これは真剣に何とかしないと不味いぞ…。こんな時に皆何処へ行ってしまったんだ? せめてユウスケくらい帰ってくれば良いのに…。」 百合ショッカーに対し何か行動を起こそうにも、三人だけでは流石に頭数が足りなかった。 なのはとユーノは依然として疲弊した体力・魔力は回復しきっておらずそれぞれに子供・フェレットの 姿のままであったし、士と離れ離れになった旅の仲間も帰って来ない状況では中々辛い部分があった。 だがそんな時だった。突然呼び鈴が鳴ったのである。 「誰だこんな時に…。」 と、文句を言いながら士が玄関へ向かっていたのだが、そこに現れたのは意外な人物であった。 「南光太郎!」 彼は南光太郎。『仮面ライダーBLACKの世界』にて、暗黒結社ゴルゴムによって次期創世王候補、 世紀王ブラックサンとして改造されてしまったが脳改造を受ける前に脱出、以後仮面ライダーBLACKと 名乗りゴルゴムと戦い続ける男。士もかつてBLACKの世界に行き彼と共闘したり、ライダーバトルで 戦ったりと色々な事があった。 「大変な事になってしまったな。百合ショッカーは様々な世界の百合厨のみならず腐女子をも 味方に付けて日増しに兵力と勢力を伸ばし続けている。」 「腐女子までだと!?」 腐女子とは、早い話が百合厨の逆を行く人間。百合厨が女性キャラ同士の百合を至高とする様に 腐女子は男性キャラ同士の801を至高とする者達。それが何故百合ショッカーに味方をすると言うのか? 「考えても見ろ。百合厨が女性キャラに男性キャラが近付く事を嫌う様に、腐女子は男性キャラに女性キャラが 近付く事を嫌う。つまり、百合ショッカーによってあらゆる女性キャラが百合になる事は腐女子にとって見れば 自分達の好きな男性キャラに女性キャラが近付かなくなると言う大きなメリットがある。つまり利害が一致しているのだ。」 「な……なんと恐ろしい事を………。」 一見馬鹿らしい様に思えるが、当人達は真剣である。いずれにせよ百合ショッカーが腐女子までをも 味方に付けてしまったと言う事態は脅威である。その内腐女子で構成された801戦闘員とか801怪人とか出て来てしまいそうだ。 「しかも百合ショッカーにはゴルゴムから信彦までもが参加しているらしい。これはもはや黙って見ている事は出来ない。」 「あの…信彦って誰?」 「………………。」 凄い真面目な話をしている時に真顔で問われて光太郎も困った。 「つまりシャドームーンだよシャドームーン。」 「ああ…月影の事か…。」 ゴルゴムによって作られたもう一人の世紀王シャドームーン。その正体は南光太郎と兄弟の様に育った秋月信彦。 そして彼は『月影ノブヒコ』と名乗り士の家の執事を装っていた事もあったし、大ショッカー大首領の座から士を追い落として 代わりに大首領になって大暴れした事もあった。しかし…ここで一つの問題が… 「あの…私達はライダーの世界の事情には詳しくないから良く分からないんですけど…。」 「無限書庫に行けばそれ関係の資料も出て来ると思うけど、もう既に百合ショッカーに制圧されてしまってるはずだし…。」 「あ…ごめん……。」 久々に台詞の機会が回ってきたなのはとユーノの言葉に光太郎も士も思わず謝ってしまうのだった。 何しろこれは一応はリリカルなのはSSの体裁を取っているのだから、ライダー側だけで話を進めても仕方が無い。 とりあえず、百合ショッカーにはシャドームーンもまた参加している事で脅威が増えたと言えるが、 それと同時に仮面ライダーBLACKこと南光太郎が士達に協力してくれる事はささやかな救いと言えた。
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突如として現れた巨大なロボット――。 それによってミッドチルダの平穏は壊された。街は崩れ落ち、人々は逃げ惑う。 多くの生命が犠牲になり、生き残った者もその人生を狂わされた。 それに比べれば些細なことなのかもしれない。 だが、この少年もまた不条理な出来事に、日常と平穏に別れを告げることになる。 それはミッドチルダに『風』が吹き荒れた日から遡ること2日前のことであった――。 魔法少女リリカルなのは―MEOU 第一話―B「少年は牢獄に己を失う」 「僕は……何でこんな所にいるんだろう……。」 少年、『秋津マサト』は呟く。答える者はいない。 声は薄暗い個室の壁に吸い込まれ、再び静寂が支配した。 どれくらいこうしているのか――時間の感覚はとうに無くなくなっている。 電灯も窓もない、薄汚い個室は牢屋と呼ぶ方が適切かもしれない。 今朝も普通に家を出て、普通に学校に通う――退屈な日常のはずだった。黒服の男に背後から何か嗅がされるまでは。 目が覚めた時には、既にこの牢屋の中だった。 「出せぇー!!ここは何処なんだ!何で僕を閉じ込めるんだ!?」 マサトは抗った。拳から血が滲むまで扉を叩き続け、喉が掠れるまで叫んだ。 何時間そうしていただろう。 扉の向こうから物音がする。 「父さん!?母さん!?」 覗き窓から辛うじて見えるのは、朝に家で挨拶をした父と母の姿。 「ここはどこなの!?閉じ込められてるんだ、外から何とか開けられないかな?」 必死で訴えても、答えは返らない。 父は目を逸らし、母は俯いて泣いていた。 「どうしたの?なんで何も言ってくれないんだよ、父さん!母さん!」 「御両親は答えられないようだ。代わりに私が教えてあげよう」 声の方に目線をやると、それはマサトを眠らせた男と似たような黒服の男だった。 濃色のサングラスで目は見えないが、全体的に痩せ型で頬も少々こけている。 「君は御両親の本当の子供ではない。御両親には15年間、君の養育をお願いしていたのだよ」 マサトは驚きに声を出すことさえできなかった。 「本当なの!?父さん!」 「たった今、月々の養育費とは別の礼金をお渡ししたところだ」 父は答えようとはしない――それが答えだった。 「父さんは……僕を売ったの?」 違う、と言って欲しかった。しかし、感情とは別に、そんな答えは最早望めないだろうことも解っていた。 それならば、せめて沈黙を守って欲しかった。 だが――父の答えは残酷だった。 「最初から……契約だったんだ。私達は元々家族なんかじゃなかった。十五年間、お前を育てる契約――それが終わって本来の関係に戻っただけだ」 「そんな……」 身体から力が抜けていく。 たとえ監禁されていても、両親が警察に連絡してくれる。必ずあの家に――ずっと暮らしてきた家に帰れる。 そう信じていた。 でも、そんな淡い期待は呆気なく砕けてしまった。 もう――自分には帰る場所は無くなってしまったのだ。 「それでは……私達はこれで……」 父が男に会釈して去っていく。 「待ってよ!!母さん、母さんは僕のことを……」 「ごめんなさい……マサト……」 そう言って、両親は視界から消えていった。 母は泣きながら父に肩を抱かれて歩く。二人はマサトを振り返ることすらなかった。 「父さん……母さん!」 マサトは扉の前に崩れ落ちた。立ち上がる気力もない。 外では男が何か話している。 「沖、これは何の真似だ?ここまで連れてきて……俺に何を見せたいんだ?」 「久しぶりに再会した旧友に、随分冷たいな……ナカジマ」 それはさっきの男とは違う声だった。他にもいたのだろうか。 「旧友だと……?ふんっ。それを言うなら"共犯者"だ」 それさえも、もうどうでもいいことだ。 そして、そのままマサトの意識は闇に溶けていった。 何故、自分はこんなところにいるのか――。 『ゲンヤ・ナカジマ』の問いに答える者はいない。 自分で決めたこととはいえ、そう思わずにはいられなかった。 起動六課隊長、『八神はやて』と早めの昼食を共にし、店先で別れた直後にゲンヤは背後から声を掛けられた。 「久しぶりだな……ナカジマ」 振り向いた先に立っていたのは、かつての彼の同僚である沖功であった。 とはいえ、十数年近く顔も見ていなかったが、その声と鋭い目つきは変わっていない。 「お前……沖か?」 彼は黙って頷いた。 本当に久しぶりの再会のはずなのに、ゲンヤにはとても懐かしさは湧いてこない。 「お前が俺に何の用だ?」 「用が無ければ昔の同僚に話しかけるな――と?」 ゲンヤは黙って沖の胸倉を掴んだ。 この男は昔からこうだった。いつも意味深で何かを隠している。目的の為には人を利用することを厭わない。 だが、それも私欲の為でなく、組織の為だったから彼とはやって来れた。 そう、十五年前までは――。 「ここでは人目に付く。ついて来い、ナカジマ。お前の――いや、俺達の過去の清算だ」 沖は動じることもなくそう言った。 またもや意味深な言葉だ。が、ゲンヤは黙って彼に従った。 そうせざるをえない理由があったからだ。 「いいぜ。どこでもついて行ってやる」 沖に連れられ、聖王教会の遥か地下へと降りていく。 「こんな地下に何があるってんだ?」 「お前に見せたいものがあってな。それに、彼女もお前に会いたがっているぞ」 「彼女だと?」 沖はそれ以上は答えようとはしなかった。 何にせよ、今は沖に従うしかない。 地下へ降り、無機質な廊下を歩くこと数分――。急に広い空間へと抜ける。 そこは多くの機材が置かれ、スタッフらしき人間が忙しなく働いていた。 その中心には―― 「ゼオライマー……!」 50mはあろうかという巨大なロボットが立っていた。 それはゲンヤと沖が袂を分かった原因。 忘れたくとも忘れられない存在。 「どうだ、ナカジマ。懐かしいだろう?」 「まったく……懐かしくて涙が出そうだ……」 それはゲンヤと沖の罪の証。 十五年前、これに乗って逃げてきた男は、もうこの世にはいない。 そしてせめてもの罪滅ぼしとして――。 そこまで考えて、ゲンヤは沖の言葉の意味に気付いた。 「まさか……過去の清算ってのは……!」 「そうだ。それはおそらく、もうじき始まるだろう」 これが真実ならば大変なことになる。 いや、聖王教会の地下に"こんなもの"が存在する時点で、既に次元世界全てを巻き込むことになりかねない危険が迫っている。 そう上は考えているのだ。 「彼女がお前に挨拶したいそうだ」 沖はゲンヤの後ろに視線を促す。 そこには娘と同じ位の年齢の美少女が立っていた。 その顔には見覚えがある。かつてほんの僅かな期間だが面倒を見た少女の面影――。 「お久し振りです。ゲンヤおじ様」 そういって彼女は頭を下げた。 戻る 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのはStrikerS――legend of EDF――"mission10『セカンドアラート』" ――新暦七十五年 五月十三日 十二時三分 聖王教会本部―― 三百年以上の歴史を誇る次元世界最大の宗教『聖王教』 古代ベルカ時代に聖王によって作られたこの宗教は、ベルカ人だけではなくミッド人の信者も数多い。 風光明媚な各地の教会は観光名所としても名高く、その中でも一番有名なのは、やはりミッドチルダ北部にある総本山だろう。 ビルのような無機質な建物とは違い、教会本部の大聖堂はその建物自体が芸術といえるほどの豪華さを誇っている。 様々な装飾を施された柱や壁。天井にはめ込まれたステンドグラスは、陽光を浴びて光り輝き聖堂内に神秘的な雰囲気を作り出している。 所々に飾られた彫刻や絵画は単なる芸術品ではなく、名高い偉人達が聖王の偉業や伝説をモチーフにして作った宗教的価値の高い作品達だった。 聖王教会教会騎士兼時空管理局理事官カリム・グラシア少将は、聖堂の一画にある事務室で書類の作成に勤しんでいた。 書類の内容は『アンノウン』対策本部へ送るための報告書だった。 『アンノウン』の出現から二ヶ月以上。被害の拡大に伴い管理局の危機感も本局、地上本部ともに高まり続け、 最初は本局のみの小規模組織だった対策本部も今や本局と地上本部の合同組織となり、三千人以上のメンバーを有するほどになっている。 リンディを始めとする『クラウディア事件』の面々も加わり、ラルゴ元帥の計らいで旧式だが数隻の戦闘艦を所持できるようになった。 カリムも聖王教会代表として協力しており、被害の集計や報告書の作成など裏方の仕事を淡々とこなしている。 だが、彼女がどれだけ貢献しようとも、事は一向に良くならないのが現状だった。 この事件に対して今後どうすべきかについて、本局と地上本部の意見がまったく一致しないのだ。 地上本部が意見を述べれば本局が横槍を入れ、本局が意見を述べれば地上本部が反論を。 メンバーの多くが己の面子や利益を最優先とし、いつのまにか、考えていることは相手の足を引っ張ることばかりになっている。 対策組織がこんなていたらくでは、被害者達も草葉の陰で号泣していることだろう。 それでも『アンノウン』の跳梁だけは何としても阻止しなければならない。 それが今の彼女の勤めであると同じに、亡くなった弟や被害者への最大の供養であるとも思っていたからだ。 「騎士カリム、騎士はやてがいらっしゃいました」 傍らに映し出されたホロスクリーン。来客を告げたのは、教会騎士シャッハ・ヌエラ。 紫の髪を短く切り揃えた彼女は、カリムの友人であり、教会騎士団内でも上位に位置する実力者でもある。 「早かったわね。私の部屋に来てもらってちょうだい」 そう答えると、シャッハに茶菓子の用意をお願いすると、カリムは書類の出来を確認してペンを置いた。 ほどなくして、修道士に案内されて客人が部屋にやってきた。 やってきたのは砂漠民のようなローブを着た人物だった。フードを被っているので顔はわからない。 客人がフードをはねあげた。 その下から現われたのは、見るからに純朴な女性の姿。 薄茶色のショートカットが唯一の特徴である女性らしい柔和な容貌。 着ているものがブレザーなどの制服だったらそのまま女子校生として通用しそうな雰囲気だ。 「カリム、久しぶりや」 彼女の名は八神はやて二等陸佐。古代遺失物管理部機動六課の部隊長である。 ―― 「ごめんなぁ、すっかりご無沙汰してもうて」 カリムの事務室には客人をもてなすためのスペースも用意されている。 ローブを脱いだはやてはそこに案内され、シャッハが用意してくれた紅茶を飲みながらカリムに笑いかけた。 はやては二等陸佐でカリムは少将。 本当はタメ口をきくことなど許されない関係だが、カリムははやての古い友人であり気心が知れている。 なので、他人の目が無いところでは、互いにただの友人として接することが出来ていた。 「気にしないで、部隊の方は順調みたいね」 「うん、カリムのおかげや」 はやては頷いた。 機動六課を設立する際、カリムは後見人の一人として部隊運営に少なからず協力していた。 残りの後見人は本局総務統括官のリンディ・ハラオウンと人事部のレティ・ロウラン。 それに加えて本局の重鎮『三提督』も非公式であるが設立を認めていた。 彼等の助けもあって、はやては部隊を構成するための人材集めに集中することができたのだ。 と、言っても新人以外で集まったのは、はやての身内や友人ばかりだが、それでも高い能力を持った実力者であることには変わりない。 部隊設立の理由はロストロギア災害への対策と迅速な行動が可能な少数精鋭部隊の実験例。『表向き』ではそうなっていた。 「私のおかげか。そういうことにしとくと、何かとお願いしやすいかな?」 カリムは中身の無くなったカップを静かに置いた。 「なんや、今日会って話すんはお願い方面か?」 今までの柔和な雰囲気から一転、真顔に戻ったカリムはホロスクリーンを呼び出しコンソールを操作した。 カリムがはやてを呼んだのは、彼女と茶会がしたかったためではない。相談したいことがあったからだ。 ヘタをすれば、次元世界全体に関わるほどの問題についての相談が。 照明が落とされ、二人の周囲に大小様々なホロスクリーンが浮かび上がる。 そこに写っていたのは、黒い巨大蟻の姿だった。 「なんやこれ? 蟻さん? にしてはちょっと大きすぎるような……」 「新種の生物よ。『アンノウン』の出現とほぼ同時期に次元世界各地で発見されたの。 詳しい生態はまだ不明だけど、調査に行った局員が何度が被害を受けているわ。 ロッサの調査団を皆殺しにしたのも、こいつらよ」 「ロッサを! せやけど、おかしいやん。そんな生き物のことわたし今まで聞いたこともなかった」 「巣に近付かなければ襲ってこないからそれほど重要視されてなかったの。 手を出さなきゃ害のない生き物よりも船を襲う『アンノウン』の方が危険だって考える人の方が多かったしね。 次元世界によっては別種の巨大生物も目撃されてるわ。赤い蟻だったり蜘蛛だったり。 ミッドチルダでは、南の火山地帯で四十メートルクラスの生物の影が数匹観測されたり、 中央の海溝ではもっと大きな四足の人工物の存在が確認されてる。 二つとも場所が場所だからまだ回収作業もちゃんとした調査もされてないけど……それと、これを見て」 ホロスクリーンの映像が切り替わる。 今度の映像は銀色の巨大ロボットだった。 頭部のない丸っこい上半身と背骨を剥き出しにしたような形の下半身。 そこから伸びる手足は異常に細長く、少し歩いただけで倒れてしまいそうだ。 右手首は指のない突起状。左手首はアサルトライフルのような形になっており、それらの存在がこのロボットが兵器であることを示している。 それにしても、見るからにがりがりで頼りないロボットだ。 無駄な贅肉はおろか、必要な筋肉すら削ぎ落としてしまったようにも思える。 並の陸士の砲撃を食らっただけで簡単に壊れてしまいそうだ。 ロボットの映像をじっと見つめながらはやてはそう思っていた。 「これは……?」 「昨日ミッドチルダの西部で発見されたロボット。詳しい性能はまだ不明だけど、大きさはちょっとしたビルくらいはあるそうよ」 「それで、今このロボットはどうなってん?」 「今日明日中に地上本部の研究施設へ列車で輸送されることになってるわ。転送魔法を使えば危険はないんだけど……」 「陸で転送使える人はあんまりおらへんからなぁ」 はやての呟きにカリムは頷いて答えた。 事実、少ない予算と戦力をやりくりしている陸上本部には転送魔法を使える魔導師はほとんどいない。 その一握りですら本局がスカウトしていくため、陸は本局以上の人手不足に陥っているのが現状だ。 なので、陸上本部は本局なら転送魔法ですませるような輸送でも、列車や陸路などといった旧来の方法を使うしかないのだ。 「近頃は船舶の被害は出なくなったし、『アンノウン』の目撃情報も段々減っていってるわ。 巨大生物だって、このごろは巣からまったく出ようとしなくなってるし、巣によっては一匹残らず消え去ったところもある。 対策本部では状況を楽観視する人もいるけど……私は不安なの。もう船を集める必要もなくなって、偵察もしなくなったってことは……」 はやては顎に手を当て、数秒間だけ考え込んだ。 そして、とある結論に辿りついた途端、はやては顔をさっと青ざめ慄然とした。 「まさか……攻撃開始が近いってことか?」 「今はまだ断言出来ないわ。そうなるっていう決定的な証拠はまだなにもない。けど……だからこそ会って話しておきたかったの。 これから何が起ころうとしているのか、どう動くべきか。まだ対応が間に合いそうな今のうちに。 対処を失敗するわけにはいかない。もう、ロッサやクロノ提督みたいなことは、ごめんだもの」 それっきりカリムは押し黙ってしまった 何かに耐えるように俯いて、瞼を閉じて唇を噛み締めている。 おそらく、死んだ弟のことを思い出しているのだろう。 ロッサの遺体は欠片も戻ってはこなかった。 彼の体はバラバラに引き裂かれ、ただの肉片となって洞窟中に散らばっていた。 その肉片を全部かき集めても一つの体にはならなかったらしい。半分以上がロッサを食らった蟻の腹に納まってしまったのだ。 僅かに残ったロッサの遺体も、その後の襲撃で次元の海に消えてしまった。 クロノも同じようなものだ。 次元艦艇の爆発は何千度という熱と猛烈な爆風を生む。 クロノの体は骨の髄までドロドロに溶かされ、欠片も残らなかったに違いない。 葬式のときは、遺体の代わりに予備の制服が棺の中に入れられた。 葬式にはクロノを慕う部下や友人達が集まり、はやても家族と一緒に式に参列した。 エイミィは泣きじゃくる子供達を励まし、リンディは一切の感情を殺したように機械的に喪主を務めていた。 そうしていなければ、リンディは子供を失った悲しみと怒りに耐えられなかったのだろう。 クロノの義妹でありはやての親友でもあるフェイト・T・ハラオウンはなんでもない様子だったが、翌日会ったときには両目を真っ赤に腫らしていた はやては彼女等の気持ちがほんの少しだけわかるような気がした。 なぜならはやても家族を失った経験があるからだ。しかも、自身の目の前で。 『彼女』と過ごした時間は確かに短かったし血の繋がりもない。 だけどはやてにとって『彼女』は大事な家族だった。 はやてや皆のために自身の消滅を決めた『彼女』 助けられなかった、止められなかった、幸せすると決意したのに出来なかった弱い自分。 まさに、世界はこんなはずじゃなかったことばかりだ。 (せやけど……) はやては表情を引き締めて、コンソールを操作してホロスクリーンを消した。 「はやて……?」 怪訝な顔をするカリムにはやては「まあ、なにがあってもきっと大丈夫」と言いきった。 「カリムが力を貸してくれたおかげで、部隊はもう何時でも動かせる。 即戦力の隊長達はもちろん、新人フォワード達も実戦可能。予想外の緊急事態にもちゃんと対応できる下地ができてる。 そやから、大丈夫! ロッサの仇もクロノ君の仇も、みんなわたしが取ったるよ」 はやての脳裏に浮かんでいるのは機動六課の堂々たる面々のことだった。 エースオブエースと呼ばれる『スターズ分隊』隊長高町なのはと『ライトニング分隊』のフェイトはまさに六課の主砲。 副隊長である『ヴォルケンリッター』は、はやての家族であると同時に凄腕の騎士達でもある。 指揮官を身内で固めることに批判があるのも事実だが、それでも彼女等が優秀な戦士であることに変わりない。 フォワードの新人四人はまだ頼りないものの、鍛えていけば隊長陣に匹敵するほどの猛者になるはずだ。 前線部隊を補佐する役目が後方支援専門の部隊『ロングアーチ』 これらにSSランクの自分が加われば、どんな敵が相手でも負けることなどあるものか! (そうや、何があっても大丈夫。わたし自身もつよなったし、力を貸してくれる皆もおる。 『闇の書』の時とは違う。あんな悲しみとか後悔なんてもううんざりや。 今度こそ、わたしは助けられる側から助ける側になるんや) 身につけた強さは自信の源となり、自信が産み出す勇気は勝利と栄光への道しるべとなる。 しかし、時として強すぎる自信は過信へと姿を変え、勇気は蛮勇へと変化する。 それらが導く先は、輝かしき勝利ではなく、泥にまみれた無残な敗北である。 八神はやてと機動六課。彼女達が進む道は栄光へのロードか、それとも…… 一方その頃―― 「冗談ではない! そんなことできるわけないだろう!」 スカリエッティのアジトでも似たようなやり取りが行われていた。 戻る 目次へ 次へ